ランデヴー II
この人、一体何なの。


私のことを尊敬しているなどと言いながら、そんな気配どこを探しても欠片も見当たらない。



「ねぇ、ケンカ売ってるの?」


思いっきり不機嫌な声でそう言って睨むようにすると、倉橋君は不満げなその目をすっと逸らした。


その仕草に、私は更に眉をひそめる。



「……すみません。でも」


視線を落として呟くように謝る倉橋君は、少し苦しそうにも見えた。


口を閉ざして噛み締める仕草に、私の中に立ち上がりかけた怒りが所在なく影をひそめていく。



「俺が……嫌なんです」


「え……?」


意味がわからず首を傾げると、倉橋君は顔を上げて私を見据えた。


憂いを帯びたその瞳に胸を突かれ、瞬間息をするのを忘れそうになる。



「今村さんが坂下さんを真似るのを、俺が見ていられないんです。何だかたまらなく嫌なんです。当然のように坂下さんの仕草で振る舞う彼女に、怒りすら沸いてくる。それが全て俺のせいだと思うと……自分自身も許せないんです」


そう言って眉根を寄せて苦しそうに私を見る倉橋君は、何かに必死に耐えているようでもあった。
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