ランデヴー II
「彼、付き合ってる人いなかったっけ?」


紗英ちゃんの後ろに身を隠すようにして壁に寄りかかると、彼女は弾かれたように振り返る。



「え……。ゆかりちゃん、知らないの?」


その言葉に顔を上げると、紗英ちゃんは私の想像よりもずっと驚いた顔をしていた。


つられて私も驚いてしまう。


何か、変なことを言っただろうか?



「何が?」


「えー、ゆかりちゃんなら知ってると思った。倉橋君、私には教えてくれたんだけどな」


クスクスと笑いながら再び背を向ける紗英ちゃんに、苛立ちが生まれる。



何だか馬鹿にされた気がした。


私の方が倉橋君のことを知ってるのよ、と。


あなたは何も知らないのね、と……。



でも、私は彼女の言葉の先が気になっていた。


倉橋君が紗英ちゃんに教えたこととは、一体何なのか。



紗英ちゃんはひとしきり嬉しそうに笑うと、私に背中を向けたままで口を開いた。
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