ランデヴー II
でも、今更何がどうできるだろうか。


私はもう右にも左にも行くことはできない。


倉橋君が幸せになるのを、遠くから見守ることしかできない。



もしも……もしもあの時。


倉橋君が前田さんと付き合っていると知った、あの時に。


逃げずにちゃんと自分の気持ちを伝えられていたら。


本当のことを言えていたら。



そうしたら、こんなにも気持ちが縛られたまま残ることはなかったのだろうか。


きちんとケリをつけていたら、こんなにも引き摺ることはなかったのだろうか。



何故再びこんなにも距離が近付いてしまったのだろう。


また出会わなければ……話をしなければ、こんな気持ちになることもなかったのに。


何の疑問も持たずに、流されることができたのに。



私は泣きそうになる気持ちをグッと抑えて、「有り難う! 嬉しい!」と喜びながらミーティングルームに直行する紗英ちゃんの後ろをとぼとぼと歩いた。


結局私には『忘れる』という選択肢しか用意されていないのだと、思い知らされながら。
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