ランデヴー II
「今村さん、出社した時から怒ってる感じだった?」


「んー、怒ってるって言うか……エレベーター一緒だったんですけど、その時は何か思い詰めてるように見えました。いつもニコニコしてるんで、あれ? みたいな」


「そう……」


川口さんが消毒液で血を拭ってくれ、落ち着きを取り戻した私はその上から化粧で傷口を隠した。


バンドエイドを貼る程ひどくはないし、それ以前にそんなことをしたら恥ずかしい。


少し切れた傷が見えるが、血が止まればたいして目立たないだろう。



「あの、守山さんが彼氏って……」


パウダーとチークを慎重に重ね終えた私に、川口さんが遠慮がちに尋ねた。



「あー……うん。付き合ってるの、彼と」


「へぇぇ、確かに仲いいとは思ってましたけど……お似合いですね」


ニッコリと笑顔で面と向かって言われると、何だか照れてしまう。


私は「そうかな、有り難う」と、曖昧に笑い返した。



「で……坂下さん、今村さんと上手くいってないんですか?」


不意にそう聞かれ、口ごもるしかない。


上手くいってないというか……表面上は上手くいっていたような気もするし。
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