ランデヴー II
「うん……行ってくる……」


私がそう言うと、川口さんは「私も行きます」と言ってついてきてくれた。


朝の忙しい時間に申し訳ないが、少し話がしたかった私はその言葉に甘えることにする。


彼女がいなかったら、この後どうすれば良いかわからない程に動揺していた。



15Fにある医務室には簡易ベッドと薬箱が置いてあり、個人の責任で誰でも使えるようになっている。


保険医の先生は普段2Fにいるので、たいした怪我でもないし、鍵だけ借りて使わせてもらうことにした。



椅子に座って鏡を見ると、引っかかれたような傷から血が滲んでいる。


恐らく彼女の爪か指輪が当たって切れたのだろう。


軽い擦り傷のようなもので、血は既に止まって固まりかけていた。



「声だけしか聞こえなかったんですけど……叩かれたんですか?」


「うん……」


正直、叩かれた直後は頭がクラクラする程だった。


余程の怒りだったのだと思うと、全く身に覚えがないからこそ余計に恐怖を感じる。
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