ランデヴー II
佐原さんは今朝の出来事を誰かに聞いたのか、それとも見ていたのか。


面白そうに、「守山とデキてんだってな」とちょっかいを出してきた。


「そうですよ」と堂々と肯定してやると、つまらなそうな顔ですごすごと席に戻って行く。


いっそ誰もが彼のようにからかってくれた方が楽なのかもしれない、とその背中を見ながら思ったものだ。



とにかく私は、自分の席が居心地悪かった。


幸い大地さんは楽観的な性格で何事もなかったかのように接してくれ、それが私を唯一和ませた。


だが、反対の席には私を敵視する紗英ちゃんの存在。



午後になってイライラが募った私は、たまらず席を立った。


販売戦略部に渡す書類をひとまとめにして、その場を離れる。


目的はもちろん倉橋君だ。


紗英ちゃんに聞けないのなら、彼に聞くしかない。



一体2人の間に何があったのか。


私にはそれを聞く権利があると、その時は思っていた。
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