ランデヴー II
「何で? 私……言わないでって言ったよね?」


怒りを抑えながら倉橋君を仰ぎ見るようにして咎める言葉を吐き出すと、彼は憮然とした表情でその目を細めた。



「言いましたけど……それじゃいつまで経っても何も変わらない。俺は自分の行動の尻拭いを、自分でしただけです。間違った解釈をされたからそれを正した。いけませんか?」


……あまりの正論に、返す言葉が見付からなかった。


しかもこの件に関して、私は関係ないような気すらしてくる。



でも……でも、私はそれを言わないで欲しいと頼んだのだ。


それを無視されて、しかもそのせいで被害を被ったのだから、「はい、わかりました」と納得なんてできない。



「それは倉橋君の自己満足だよ。結局今村さんのこと傷付けただけじゃん」


「確かに……傷付けたかもしれません。そんなに優しい言い方はできなかったから。でも……俺が我慢できなくなったんです。坂下さんの姿かたちで振舞う彼女に……」


「そんなの、別に大したことじゃ……」


そう言いかけた瞬間、倉橋君の表情がフッと曇った。


そして何とも言えない苦しそうな顔をしたかと思ったら、微かな笑みを浮かべる。


それはまるで自嘲するような苦々しい表情だった。
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