ランデヴー II
「これ、持って行こうとしてたの。承認もらったら経理に回しておいてね」


私はそれだけ言うと、下りて来た階段をそのまま駆け上る。



倉橋君は、何も言わなかった。


その視線を背中に感じながら、上から降りて来る人と擦れ違った時。


チラリと視線を向けた私は、その人の顔を見た瞬間ハッと息を呑んだ。


それは……クリスマスの日に倉橋君と一緒に歩いていた女の人……。



「あれ? 倉橋君、お疲れ様」


「北野さん……。お疲れ様です」


背後で親しげに言葉を交わす2人を振り返ることはできず、私は非情階段を後にした。



結局私は紗英ちゃんの怒りの原因を知ることはできず、そして『北野さん』という女の人を頭の片隅に居座らせたまま、ただ悶々と仕事に打ち込むしかなかった――。
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