ランデヴー II
その視線に耐えられなくなった私は、苦し紛れに言葉を搾り出す。



「……言いたくない」


「……真似しないで下さい」


「真似でも何でも、私も言いたくないから。そんな義務、ないし……」


「坂下さん、それは――」


倉橋君が更に何かを言おうとした瞬間。


上の方で、ガチャッと扉が開く音がした。


続いてバタバタと誰かが階段を駆け下りる気配。



そこで私はようやく思い出した。


ここが非常階段だったことに。


幸い今の今まで人が通らなかったから良かったものの、誰が来てもおかしくないような場所でこんな話をするなんて……。


迂闊だったと反省する。



再び倉橋君の腕を振りほどくようにすると、今度はあっさりと自由になった。


私はその手で持っていた書類を、倉橋君に押し付ける。
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