ランデヴー II
1度知った人肌は、そう簡単に忘れられるものではない。


そこはかとなく胸にはびこる喪失感に、私は戸惑っていた。



この道を選んだら、どんな結末になるのか。


未来が見えないからこそ、人は悩む。


例えこの選択が間違いだったとしても、それを今の私が知る由もないのだ。



結局私は何がしたかったんだろう。


賢治と別れて、倉橋君に想いを伝えたい。


そう、考えていた。



でも賢治を盛大に傷付けてしまった今、そんな気持ちを見失いつつある。


賢治のあの悲しげな瞳が、怒りすら伴う表情が、今も痛みと共に胸の中に残っているから。



人を傷付けて得る幸せは、本当の幸せと言えるのだろうか――。


1つだけ明確なのは、少なくとも今の私はちっとも幸せなんかじゃないということ。



こんな気持ちでは、倉橋君に想いを伝えるなんてことは到底できないと。


ぼんやりと天井を見つめ、1人溜息を吐くのだった。
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