ランデヴー II
「やめてよ、触らないで」


「……どうして泣いてるんです?」


痛い所を突かれ、私は一瞬口ごもった。



だから嫌だったのに。


泣いてたなんて、気付かれたくなかったのに。



「別に……泣いてなんか……」


「……俺、自惚れてもいいのかな?」


急に独り言のようにぼそりと呟いた倉橋君に、私は思わず顔を上げた。


すると街灯の光に照らされた憂うような倉橋君の瞳にぶつかり、ドキッと胸が鳴る。



少しはにかんだような笑みを浮かべた倉橋君は、吸い込まれるような魅力を放っていた。


これだ……このオーラに、私は引き寄せられてしまう。


好きだと強く思わずにはいられない。



その姿を眩しいとさえ感じながら、私はぼんやりと彼のその唇が「1つ言っておくと……」と動くのをじっと見ていた。
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