ランデヴー II
あんな場面を目撃してしまったのだ。


今更そんなことを言われた所で、簡単に信用できるはずがない。



「坂下さん、こっちを見て下さい」


そう言って腕を軽く揺すられるが、私は頑なに視線を逸らし続けた。



少し意地になっているのかもしれない。


話を聞いてなるものか、顔を上げてなるものか、と。



それはまさしく嫉妬だ。


そしてからかわれたんだと落胆した気持ちもあるし、更にそんな気持ちでいることを倉橋君に悟られることさえも、嫌だった。



「……坂下さん、どうしてそんなに怒ってるんですか?」


「別に……。私、怒ってないし」


「怒ってるじゃないですか。それに……」


倉橋君はそう言って手を伸ばし、私の頬を親指でそっと撫でた。


突然の行為に驚いた私は、慌ててその手を払う。
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