ランデヴー II
「悲しくなって、泣いたんですか?」


そう問われ、私はもう居ても立ってもいられない程に羞恥で頬が熱くなるのを感じた。



素直に頷くことなんて、できない。


だって、倉橋君の顔にはうっすらと笑みが浮かんでいるから。


まるで私の反応を見て面白がっているかのように。



「答えて下さい」


そう言いながら反対の手も壁に突く倉橋君は妖しげで、そんな彼の顔と両腕に囲まれて、私が何を言えるというのだろうか。


あまりの距離の近さに、呼吸すらままならないというのに。



「答えられないなら、体に聞きますよ?」


倉橋君はそう言うと、瞬間驚き息を呑む私の唇を奪った。


チュッと軽い音を立てて離れる唇。


そうして突然の出来事に硬直する私を見て満足そうに笑うと、更に2度3度と唇を重ねた。



倉橋君は私の体に触れることなく、何度も何度も楽しそうに角度を変えて唇を合わせていく。


繰り返されるそのついばむようなキスに翻弄された私の呼吸は乱れ、気付けば倉橋君の胸元に手を突いて、シャツの裾を握り締めていた。
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