ランデヴー II





「こんにちは、初めまして。坂下ゆかりです」


私はベッドに横たわる女性に、そう挨拶をした。


その人は斜めに視線を向け、私を認めると優しそうに微笑んだ。



「祖母ちゃん。俺の大事な人だよ」


倉橋君が横からそう言うと、彼女は麻痺の残る体で、それでも嬉しそうに「そーう」と答えてくれた。



倉橋君と想いが通じ合って初めての週末、私達は2人で彼のお祖母ちゃんの病院を訪れていた。


お祖母ちゃんの今後について彼の願いは叶わず、点滴以上の治療は施さないという結論に至った。


倉橋君も色々と思う所はあるようだが、今はそれを受け入れている。



人間らしく生きるという点に於いて、きっと天命を全うすることがお祖母ちゃんの為でもあると、無理矢理納得しているのかもしれない。


それにこれは親族の意思でもあるし、そう簡単に変えることはできないのだ。



お祖母ちゃんはこの先どれくらい生きられるかはわからない。


だから倉橋君は最期のその日まで、精一杯お祖母ちゃんの傍で過ごすことを決めたようだ。
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