生意気なハケン君
時計の短い針が真上を指した頃、漸く飲み会はお開きになった。








が――。







「――もっとぉのませろぉぉ」

「椿、いい加減にしなさいよ」





完全に酒に飲まれた私。



仲のいい同僚の力を借りて、漸く立っていられるほどだった。





「じゃ俺達帰りますぅ~」



他の人間達も千鳥足ながら、個々に別れ家路に向かう。



同僚も面倒な表情を浮かべながら、
じゃ私達もと言って駅へ向かおうとした。






「あの……、良かったら俺が課長を家まで送り届けますよ」





その時、そう言って同僚に話し掛けたのは神城だった。





私は同僚の首に腕を回したまま、虚ろな表情で神城を見つめる。




だが酔いがかなり回っているため、その端正な顔すらボンヤリとぼやけたまま。





「……そう?じゃ頼んだわね」






私と神城が同じアパートに住んでる事は同僚しか知らないし、神城自身にも話していない。




それを好都合と感じた同僚は、


何も知らないふりをして私を神城に受け渡す。





「綾子ぉ、どこ行くのよぉ」

「――神城君が家まで送ってくれるって。アンタもそっちの方がいいでしょ?」
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