生意気なハケン君
同僚はニッコリ笑って茶化すように私の額を軽く叩いた。






「じゃ私は帰るから、後は宜しくね」

「――はい。お疲れ様でした」






同僚の言葉にシラフの神城は頭を軽く下げ、その後ろ姿を見届ける。






「課長、俺達はタクシーで帰りましょう。その方が早いですから」






私の腕を自分の肩に回し、

自らの腕を私の腰に回して私を支える神城。





心配そうに顔を覗き込んでは、
大丈夫ですか?と声をかけてくれる。





だが私は睡魔と気持ちのいい酔いで、その低い声すら耳に届かない。





それは今自分がどういう状況で、


誰に支えてもらっているかさえ判別がつかない状態だった。






これが少しでも理性が効いていたなら、

私の心臓は早鐘のように激しく鼓動していただろう。




そして真っ赤になった顔は、

酒のせいだと頑なに言い張ったかもしれない。








――キキィィ……。




歩道から手を上げた神城の前に、国道を走っていた一台のタクシーがハザードを出して止まった。





「さぁ、乗りますよ」

「ん……」






ドアが開いたタクシーに、

私を先に乗り込ませ最後に神城が乗り込んだ。






そして運転手に行き先を告げると、

タクシーはドアを閉め深夜の都心を颯爽と走り出した。
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