彼はくせっ毛君
カラオケ屋から出るといつもの街並みでホッとする。

あーあ。くせっ毛君。

やっぱり見ているだけの恋なのかな。

6限目にあんなに期待していた為、期待外れでショックが大きかった。


帰りに通った自分の中坂高校もくせっ毛君のいる桐高校にも今日は部活がないせいか静まり返っている。

この通りは学生しか通らない為今は人っ子一人通ってない。


ブブブブ…

またあみからメールだ。


《今合コン坊主の人抜けて丁度2対2になったよ》

あぁーあの野球少年みたいな人抜けたんだ。

あとの茶髪と金髪の二人と違って硬派そうだもんなー。


そんな事を考えていると

「ねえ!!!」

後ろから男の人に呼ばれた。


「…?」

振り返ってみると
さっき合コンに参加していた野球少年みたいな人がいた。

「な、なんですか?」

何故か野球少年ぽい人は息を切らしている。
走ってきたの…?

「あの…っ!僕、原田 勇輝(ユウキ)って言います!」

…え。
私合コン抜けたのに自己紹介しにきたの?

「あ、そうですか…私は田沼 美凪です。」

…道端で自己紹介。


「あの!…いつも桐高から窓側にいる田沼さんの事見てました!好きです!…僕と…付き合ってください!!!」


…………はい?


いきなり顔を真っ赤に染めて告白をしてきた。


………ていうか。
私、見ている側だったのに見られている側だったんだ。


くせっ毛君を見ている私と一緒だね…


「と、友達からでもいいです!お願いします!」

顔を赤くして私の手を握ってきた。

「…!いや、私好きな人いるんで困ります。…手、離してください。」


……ぎゅー…。

「友達になってくれるまで離しません!たとえ僕の生命線が途絶えたとしても!!」

怖っ!!!何言ってんのこの人ー!!!!

死ぬまで離してくれる気ないの!?


「いや、本当にやめてくださいっ!あなたと関わる気はないです!」


「じゃあ化石になっても離しません!!」

…怖い…。これが本物のストーカーだ。


とりあえず助けを求めようと手を繋がれたまま近くの駄菓子屋に走った。




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