猫かぶりは血を被り、冷徹はささやかに一瞥した


「あのー」


「あ、すみません!」


馬車の御者(ぎょしゃ)を勤めるエレナが口を出したことにより、ミカエルは手を引っ込める。


馬車馬は一頭でもあんな少女が手綱を握るのはひどくちぐはぐだ。加えて、ボンボンが襟元から垂れ下がるピンクのボアポンチョの防寒対策をしているので余計に運転できるのかとも思えたが、ここまで来たからには達者ではあるのだろう。


「いえいえー、いつまでも待ちますよー。エレナ、空気読めるんでー。ただお姉さん、薄着だし、話すなら中の方がいいんじゃないかなーって」


見送るだけだからこそ、ミカエルは軍服だけで防寒対策はしていない。エレナが声をかけたのはそんな心配あってからと分かったが、余計な気遣いをさせてしまったとミカエルは頭を下げた。


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