猫かぶりは血を被り、冷徹はささやかに一瞥した


攻撃に対する反応が早いと残った暗殺者は思った。

ただそれは認識の履き違え。攻撃への反応(対処)が早いというわけではなく、もとよりエレナは暗殺者が動いた時から反応していた。


敵からそっぽを向いていた目は視ることがない、ならば後は“聴く”のみ。


「――」


押し殺した恐怖と共に残り一人がこちらへ。

駆けた足。
水の中から外へ。
“ばしゃり”と――


「バカだね、ほんと」


奇襲の手を腕ごと切り離す。


「がっ、ああ゛」


二歩三歩と痛みにより下がる暗殺者をエレナは逃すことなどしない。右肩に大剣を突き刺し、押した。力の流れに逆らえない暗殺者は前から後ろへ。盛大なる水しぶきをあげて、転倒した。


体を立たせて逃げようにも、貫通した大剣が地にまで届き、体を磔刑と処する。


< 62 / 81 >

この作品をシェア

pagetop