猫かぶりは血を被り、冷徹はささやかに一瞥した


翻した勢い――舞うように回転した旋風と共にエレナの大剣が暗殺者の“上下”を別けた。


一際噴出する血飛沫の中、攻撃後のために隙ありと二人目がエレナの背後から刃を振り下ろそうとしていた。


頭頂部目掛けて。しかして悲しいかな――エレナにとっては見なくても対処できる一手だった。


ナイフが当たる前に、ナイフを持つその腕を掌握する。息つく暇もなく、その手を内側に捻り、大剣の柄で暗殺者のみぞおちを殴打した。


「ごっ」


破裂した風船のように息を一気に体外に排出したあとに、萎れてその場に倒れ込む。


エレナの中では十秒が一秒の世界なのか、こちらが先手に回ったつもりでも、どれもが後手(遅い)と処理される。


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