猫かぶりは血を被り、冷徹はささやかに一瞥した


ルカがした止め。

無駄を嫌うルカが動かないものに印籠を渡すことなどしなく、止めを刺したならばそれは“意識があった”のだろう。


見れば、暗殺者の手元にはナイフがあった。あれで背後からエレナを突き刺すつもりだったか。


「ルカ様に助けられちゃったー」


ニャハっなんて愛らしくエレナが喜ぶことをルカは白々しいと目を細めた。


「わざとだろう。殴打の際、踏み込みが甘かった。あれでは気絶などしないし、悶絶止まり。お前、こいつが“どっちを狙うか”試したな」


「バレちゃいましたかー。でもでも、こいつらの狙いは私だって予想はできていたんですよ。だからそいつで決定打にしたかったんですけどー。ルカ様に危険はないかなーと思って」


だから加減したと、エレナは笑ってみせた。


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