猫かぶりは血を被り、冷徹はささやかに一瞥した


「推測でしかないがな。だがこのタイミングで――私と共にいるお前を殺す動機は一つしかない」


同盟が結ばれるという緊迫感もある時に、ちょっとしたいざこざは大きな淀みを産む。


両国に引かれるはずだった線を切るには淀みを大きく、それこそ、反旗を翻すほどの事柄を。


「差し向けたのはお前たちの王だ。お前を殺した後、その殺害人を共に行動した私に仕立てあげるつもりだったのだろうな」


「そんなことしたら同盟できなくなっちゃうじゃないですか。結びたいと申し出したのは現バルギルド国王なのにー。仮に破棄したいにしても、どうしてそんな三文芝居みたいなことするんですか」


「だから茶番だと言った。最初からだ。最初から、そちらの国王は我が国と同盟を結ぶつもりなどなかった。やけに下手に出て、条約すらもこちらよりにしたのはいち早くこちらが話に乗るため。

どれもこれもが布石に過ぎない。戦争を起こすためのな」


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