猫かぶりは血を被り、冷徹はささやかに一瞥した
「戦争……」
血生臭いのは赤く濁った水から漂うが、戦争のイメージより湧いた想像に生々しさを産む。頭に幾多の断末魔が流れた。
「芝居をするのはそのためだ。『こちらは親交を深めようとしたのにあちらが裏切った』という大義名分を掲げて、『裏切った奴らに制裁を』と民は剣を取る。
戦争というのは王が決定するだけでなく、民の意思も尊重される。大国ならば尚更、争うことで産む利益など土地が広がるだけだ。それが莫大だと言うならばそれで良いが、民が死に絶え、いなくなったまっさらな土地で何を開拓するのやら。
頭のいい連中がいる分には戦争など起こらないが、そちらの強欲王は『民全てが賛同する正義』を作りたいらしい」