さくら色 〜好きです、先輩〜

最後の一試合を観戦して、私達は子供達と別れた。

ランニングする人達に追い越されながら長い土手をゆっくりと歩く。


「今日は付き合わせてごめんな?」

「とんでもない!私楽しかったですよ。亮太君達と仲良くなれたし」


別れ際、今度公園で一緒にサッカーしようねって約束した。

亮太君が「俺達が扱いてあげるから覚悟しといてね」と付け加えて。


「それと、先輩の色々な顔を近くで見れたから本当に嬉しかった」

「色々な顔?」

「皆と話してる時の楽しそうな顔とか、応援してる時に“くそーっ!惜しい!”って悔しがってる顔とか、点が入った時の喜んだ顔とか。本当に良い顔してましたよ!」


今日の先輩は一段と表情豊かだった。

中学の時も色んな顔を見たことあるけど、いつも遠くで見てドキドキしていただけだったから。

短い時間だったけど、隣りにいれた事が幸せで。

夢の中にいるようなふわふわした気分だった。


「……」

「あの…先輩?」


先輩が急に足を止めたのに気付き、数歩先で振り返った。

俯いたまま微動だにしない先輩。

不思議に思い、私が先輩の顔を覗き込もうとすると。


「見るな…」


先輩は顔を逸らし、手で目と鼻の辺りを隠した。




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