さくら色 〜好きです、先輩〜
「…あれ…?」
突然、昇降口で鞄の中を漁り出す那奈。
「どうしたの?」
「携帯が無いの…そうだ、机の引き出しに入れたんだった。取ってくるから先に行っててくれる?」
「じゃあ場所取っとくね」
那奈は「すぐ行くね」と後ろ向きに手を振って走り出した。
「前見ないとぶつかるよ!……って、危ない!!!」
ーーードンッッ!!
大きな衝撃音と共に那奈の鞄が宙を舞った。
「那奈!」
那奈は床に思いっきり尻餅をつき、私はその場に靴を脱ぎ捨てた。
「痛たた…」
「大丈夫?怪我ないか?」
ぶつかったスーツ姿の若い男性が那奈に手を差し伸べて声を掛ける。
「…すみませんでした…」
那奈はその手を取ると、ぶつけた所を摩りながら立ち上がる。
「廊下は走るなよ」
「…はい……え…?」
その男性は那奈の頭にポンっと手を置くと、職員室の方へ消えて行った。