さくら色 〜好きです、先輩〜

「凄い跳ね飛ばされたぞ」

「あれ絶対下半身強く打ったよな」


観客席からそんな声ばかり私の耳に入ってくる。

足が震えて動かない。

私はただその人集りを見ている事しか出来なかった。



「あ!見えた!桜井先輩立ってるよ。なんとか大丈夫そうだね」


そう言って、安堵の表情を浮かべる里美。

先輩は小野田先輩と若菜先輩に向かって心配ないと言うかのようにジャンプして見せている。

だけど私はその後の痛さに歪んだ表情を見逃さなかった。


「先輩…大丈夫じゃない…」

「え?」

「怪我した方の足、庇って立ってる。跳ね飛ばされた時に打ったんだ…」


小野田先輩が厳しい表情をしてる。

二人の会話は聞こえないけど多分桜井先輩を心配して何か言ってるんだと思う。




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