さくら色 〜好きです、先輩〜
「俺は次の選手権でどうしても優勝したい。矢野や他の皆の為にも。インターハイの日、俺はただ観てることしか出来なかった。この二年間、俺…まじで何やってたんだろうって悔やんでも悔やみきれない…」
その想いは、あの日の先輩からヒシヒシと伝わってきた。
だからこそ練習に集中したいっていう気持ちも分かるし私もそれを応援したい。
「だけど葵といると俺、弱くなるんだ。葵ともっと一緒にいたい、葵に触れたいって思う…」
先輩の声が少し震えている。
その言葉と声に胸が高鳴った。
「頭から離れないんだ…夏樹が葵の背中に手を回して抱いてたあの時のことが」
「あれは!腕を引っ張られて態勢崩しただけで…」
「わかってる。萩原から聞いたから。だけど、わかっててもモヤモヤするんだ。葵のこと守れなかった。俺のせいで怖い想いもさせた」
「私、もう大丈夫です!あの時のことなんて何とも思ってません!」
「嘘付くなよ。葵がまだ気になってることぐらい見てればわかる」
先輩は私の手をギュッと握った。