さくら色 〜好きです、先輩〜
先輩の感情を失った表情に、金縛りにあったかのようにビクッと身体を強張らせた。
私はまた同じ事を繰り返すの?
このままじゃ、二年前と同じ。
ただ先輩の後ろ姿を見てるだけのあの頃と何も変わってないじゃない。
もう…後悔はしたくない…!
「待って!!」
私は意を決し、先輩を追いかけて腕を掴んだ。
先輩は足を止め、肩越しに振り返る。
「先輩!何があったんですか!?サッカーは?県外の有名校で頑張ってプロになるのが夢だって、そう言ってたじゃないですか!」
「……」
「その茶髪も制服を着崩してるのも、その瞳も全然先輩らしくないです!」
誰もいない静まり返った公園に私の声が響き渡った。
重い空気と少しの沈黙が二人の間を漂う。
「…っ、俺らしくないって何だよ」
「…せ、んぱい?」
自分を抑えるように言った先輩の声は、身体の奥底から絞り出したように低く微かに震えている。
私の知らない先輩の姿に、戸惑いを隠せない。
「何も知らねぇくせに口出すんじゃねえよ!」
先輩は私の手を思いっきり振り払うと、走って公園を出て行った。
その後ろ姿は小さく、泣いてるように見えた。