さくら色 〜好きです、先輩〜
*里美side*
「んっ?恭介?」
予備校の帰り、信号待ちをしてる部活帰りの恭介を見つけた。
そういえば葵が “恭介に逃げられた” って騒いでいたっけ。
私は忍び足で背後から近付き、恭介の肩を叩いて声を掛けた。
「よっ!今帰り?」
「うわっ!…なんだ、里美か。驚かすなよ」
本気で驚いた様子の恭介は、左胸を抑えながら大袈裟に息を吐く。
「今日、葵から逃げ続けたんだって?」
「…っ…べ、別に…逃げたわけじゃねぇし」
「そんなに桜井先輩のこと聞かれたくないの?」
「……」
恭介は俯いたまま何も言わない。
こんな恭介は珍しい…ううん、初めてかもしれない。
いつもハッキリ物を言うタイプなのに。
「今日は逃げきれたけど明日も明後日もずっと逃げる気?そこまでして隠したい理由って何?」
「…葵はきっとショック受ける。あいつ…まだ先輩のこと好きなんだろ?それぐらい見てたらわかる」
恭介はそう言って眉を顰めた。