さくら色 〜好きです、先輩〜

恭介から聞いた内容は残酷なもので、私達は暫く何も話せなかった。


「私が葵に話す」

「里美!それは…」


確かに恭介が言った通り、葵は凄くショックを受けると思う。

人の心の痛みや変化に凄く敏感な子だから。

クラスで様子がおかしい子がいたら、いち早く気付くのはいつも葵だった。


そして今回も先輩を一瞬見ただけですぐに何かを感じとった葵。


外見や雰囲気が変わっていたからって、何かあったとは限らない。

数年経てば人は変わる。

ましてや中学生が高校生になったら、誰だって大人っぽくもお洒落にもなる。

割合としては、そっちの方が多いと思う。


先輩がうちの高校に転校してきたのだって、私ならサッカー辞めちゃったんだって思うだけ。

スポーツ推薦で進学した人が、“監督と反りが合わなくて”とか“ちょっと怪我して”とかで部活を辞めて転校してくるなんてよくある話だし。


でも葵はそうは思わなかった。

桜の下で会ったあの短時間で、先輩の心の闇に気付いたんだ。



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