さくら色 〜好きです、先輩〜
数十分練習して二人は帰り支度を始めた。
「あー!やば…」
「どうしたの?」
恭介は右手を目元に当てて焦った素振りを見せている。
「ちょっと用思い出した!俺、先に帰るな。先輩、お先に失礼します」
「え!?ちょっと、恭介!!」
恭介はいかにも今思い付いたと言わんばかりの下手くそな芝居をして広場を走って出て行った。
私は呆気にとられながら、ただ遠ざかってる背中を見ていた。
先輩は私の隣りでクックと肩で笑っている。
「ホント小野田といい恭介といい嘘が下手な奴らだな…家まで送るよ」
「え?いや…まだそんな暗くないし大丈夫です」
「駄目。ほら、行くぞ」
半ば強制的に先輩は私の腕を引いて歩き出した。
不意に掴まれた腕が熱を帯び、鼓動が跳ねる。
「あ、あの…先輩、腕…」
「ん?…ああ悪い」
先輩に掴まれていた腕が薄っすら赤く染まっていた。