さくら色 〜好きです、先輩〜

「あ、あああ、あの…」

「ごめん。少しだけ…もう少しだけこうさせて…」


先輩の胸の鼓動が聞こえる。

速くて力強いその音が私の頭の中に響いて、私をおかしくさせる。

私は先輩の背中に腕を回して胸に顔を埋めた。


どのぐらいそうしていたかわからない。

先に口を開いたのは先輩だった。


「葵、明日優勝したら…真っ先にお前に会いに行く」


先輩は更に強く私を抱き締めた。



決勝戦当日。


「昨日はちゃんと眠れたか?泣いても笑っても今日が最後だ。誰一人として辛い練習から逃げなかったお前らなら大丈夫。胸張っていけ」


試合前の先生の言葉にも熱が入る。


「三年生は今日で引退だ。下級生は三年生の背中をよく覚えておけよ。次に迷った時、きっと道標になってくれる」


引退…

今日で三年生がこのユニフォームを着て汗を流してる姿を見るのは最後なんだ。

途中からマネージャーになったから一年も一緒にいないけど、この数ヶ月の間で色んな先輩達を見てきた。

何事にも全力で、向上心を常に持っていて、仲間を大切にして…

そんな先輩達が大好きだった。


今日は声が枯れてもいいから精一杯応援しよう。

今までの感謝を込めて…



< 445 / 499 >

この作品をシェア

pagetop