さくら色 〜好きです、先輩〜
「うん。私も那奈には頑張って欲しい。大丈夫!小林先生は絶対忘れてない」
「葵…わかった。慎ちゃんに話し掛けてみるよ」
元気を取り戻した那奈は華のように可愛く笑った。
この顔、早く先生に見せてあげたい。
絶対ドキドキするはずだから。
ーーーギィィ…
屋上の重い扉を開くと、視界いっぱいに太陽の白い光が飛び込んで来た。
「っ、眩し…」
眩しさのあまり、思わず腕で目を隠す。
光に慣れてきたころ恐る恐る目を開けると、スーツ姿の男性が顔の上に雑誌を乗せて寝転がっているのが見えた。
スーツの上着を枕代わりにしてワイシャツの袖を肘まで捲り、露出された腕は小麦色に焼けている。
横にコンビニのビニール袋。
その上には風で飛ばされないようにペットボトルが乗せられていて、たまに吹く風がカサカサと音を鳴らしていた。
「小林先生!」
私が声を掛けると、先生は雑誌を少しズラして寝転がったまま私達を見上げた。
那奈は私の腕を掴みながら後ろに隠れている。