さくら色 〜好きです、先輩〜

「見た事ない顔だな。一年生か?」

「はい。2組の西原です」

「俺になんか用?」


先生は眠そうに目を擦りながら身体を起こし、あぐらを掻いて座った。


面と向かって先生を見たのは初めてだけど、やっぱり高校生とは違う。


目鼻立ちの整った顔。

ゴツゴツした骨格、スラッとした指や細身なのにしっかり筋肉がついた腕。

ネクタイを緩め、第二ボタンまで開けたワイシャツから見える首筋や鎖骨。

少し掠れた低い声。

清潔感が漂い、大人の色気というか雰囲気を感じる。


そんな先生に一瞬、胸が跳ね上がった。


「私じゃなくてこの子が先生に用あります」


そう言って、まだ隠れている那奈を先生の前に引っ張り出す。


「ちょっ!葵!」

「この子の事、覚えてませんか?」


那奈はスカートをギュッと握り締め、耳まで真っ赤にして俯いている。

その姿を見ただけでも緊張がピークに達しているのがわかる。


先生は私達の目の前まで来ると、那奈の顔を覗き込んだ。


「ん?お前もしかして…」


先生は丸く目を見開く。


「…那奈?」

「うん…那奈だよ。久しぶり、慎ちゃん」

「まじで!?本当にあの那奈?」


那奈はさっきまでの緊張した表情から一転、嬉しそうに満点の笑みを浮かべている。

先生の那奈を見る目が一気に優しい目に変わった。


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