さくら色 〜好きです、先輩〜
「…どうして私なんですか?」
「それは…ごめん、私からは言えない。だけど、お願い!桜井君を説得して」
眉を寄せ、必死な様子の若菜先輩。
そんな先輩の姿に、委員会の時に感じたドロドロな感情が沸き起こってくる。
若菜先輩はもしかして先輩のこと…
「あっ、勘違いしないで?桜井君とはずっとサッカー仲間だったから、チームメイトとして心配なの」
若菜先輩は私の曇った表情の意味を悟ったのか、「恋じゃない」と強調した。
そんな事でヤキモチ妬いて若菜先輩を困らせて、自分の心の狭さに嫌気が差す。
「それにね、私は小野田君と付き合ってるの」
え?
小野田君って…小野田部長…?
「ええーーー!!」
「シーッ!!」
そういえばこの前、凄くいい雰囲気だった。
思えば小野田先輩だけ若菜先輩のこと名前で呼び捨てにしてるし。
何で気付かなかったんだろう。
若菜先輩は首筋まで赤く染めている。
「この事は誰にも言わないでね。引退するまでは秘密にしておきたいんだ。私達の事で部内を騒がせたくないから」
そうか、秘密にしてるから噂とかで聞かなかったんだ。
この二人が付き合ってるなら学校中に噂が広がっててもおかしくないし。
「あ…もうこんな時間だ。私は先に学校に戻ってるね」
若菜先輩は「頑張って」と手を振って行ってしまった。