時は今
午後の授業は英語だけ出て、保健室で休んだ。
体調が悪い時は普段よりも色々な音がひどく響いて聴こえてくるため、人がたくさんいるところは受けつけなくなってしまうのである。
横になっていると雨が降りだしていた。
窓際に洗って乾かしていた陶器の器が雨粒を受けて音を立てる。
(あ──和音になってる)
四季は何となく嬉しくなって、その音に耳をすませた。
「失礼します」
女生徒の声がした。四季は気になって身を起こす。
入ってくる足音がして、半ばで止まった。先生がいなかったからである。
「──先生なら外に出たよ」
四季はカーテンを開けて女生徒にそう言った。
「あ…」
「忍?どうしたの?」
「四季も」
「気分悪いの?」
「──お薬もらいに」
忍は困ったように言った。
「先生いない時に勝手にもらったらダメだよね」
「座れば?顔色悪い」
四季は制服のポケットを探す。
「お薬って…痛み止め?」
「うん」
「待ってて。あったと思う」
四季は忍にそれを渡した。
「特にアレルギーはない?」
「ないと思う」
「あげる。普通に市販されているものだから、たぶん大丈夫だよ」
忍は四季の対応に驚いたが「ありがとう」と言って受け取った。
四季は別段それがめずらしいことでもないように、それ以上何も聞いてはこなかった。
薬を飲んで、忍は四季の眠っているベッドのとなりのベッドに座った。
「四季も大丈夫?」
「うん」
「…ごめんね。あんな難曲」
四季の視線がゆるやかに窓際の陶器から忍へと移った。
「和音」
「え?」
「聴いて行けば?楽しいよ」