時は今
「これでよし、っと」
長く整理されていなかった、部室の廃棄する印刷物を纏めて智は一息ついた。後はこれを捨てに行くだけなのだが。
「重…っ。あー入れすぎた…」
持とうとしたところで、印刷物を入れた箱が重すぎて、また下ろしてしまった。
「持つよ」
「ら?」
すっと横から箱を持って行かれ智はそちらに目をやる。
「は?…四季?」
「重そうにしてたから」
「あ…ええと…いやあの。ええ!?」
意表をつく人物に持って行かれて、智は四季を上から下まで見下ろしてしまう。
「何ですか、検診に行ってた少年がこんなんとか、聞いてませんけど。手、大丈夫なの?」
智の正直過ぎる感想に四季は笑ってしまう。
「いいね、吉野さんの反応」
「だって、そら驚くわ。何でここにいんの?」
「少し吉野さんに聞きたいことあって」
「私?」
「歩きながら話そう」
「ああ…。じゃあありがたく手を貸してもらいます」
智は小さい方の箱を持つと、四季と並んで歩き出した。
由貴繋がりで四季と話すことはあるが、智と四季がふたりで話すことは接点が少ないからか、あまりない。
「つか、四季、力あるんだ。ごめん、本気でびっくりした」
「何でだろう。この間由貴にも言われたんだけど」
「ピアノ以外に何かやってんの?」
「ううん。特にこれと言ってしてないよ。──妹の練習につき合うことはあるけど」
「練習?ってピアノ?」
「ううん。バレエの」
「バレエってあの踊るやつ?」
「そう」
「え?四季も踊れたりすんの?」
「僕は教室に通っているわけじゃないから踊れないんだけど、バレエ曲とか実際のバレエを見て勉強しているうちにね。バレエ曲の作りがどうなっているのか、踊り手の感覚を考えながら聴いていると面白いよ。柔軟体操だけならそんなに身体に負担はかからないから、時々してる。それだけでもどんな感じで指先とか全身の動きがどう音楽にのって表現されていくのか、感覚はわかるし」
「へぇ…」
演劇部にいる身としては「表現」は智も関心のある分野だ。
「うちなんかそんな習い事に金出せるほどの家じゃねぇからなぁ…。でも四季の話聞いてると柔軟は独学でも出来るのかなぁ」