時は今



「何だよ。全員で歌うんじゃなかったのかー」

 ツッコミが入ると、樹は予期していたように答えた。

「ああ。先に抜けた、君たちより少しだけ上手いこっちの人たちは、ソロパート歌うはずだから」

「えー!?」

 望月杏たちが寝耳に水というような声をあげる。忍や馨のように声楽を先攻している生徒だけが動じていない。

 高遠雛子が「ちょっと、聞き捨てならないわね!」と憤慨したように言った。

「少しだけ上手いって何よ!少しだけ耳が良くて指揮が出来るだけのくせに!」

 雛子の言い方が可笑しかったのか、音楽科の生徒は爆笑した。

「イェーイ雛子、もっと言えー」

 樹も可笑しかったのか笑った。

「高遠さん、揺葉さんのソロパート歌ってみて?聴いてみたい」

 忍と四季が意表をつかれたように樹を見た。

 樹が「いいよね?」と確認でもするような愛嬌のある表情でこちらを見つめた。



< 236 / 601 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop