時は今
「何だよ。全員で歌うんじゃなかったのかー」
ツッコミが入ると、樹は予期していたように答えた。
「ああ。先に抜けた、君たちより少しだけ上手いこっちの人たちは、ソロパート歌うはずだから」
「えー!?」
望月杏たちが寝耳に水というような声をあげる。忍や馨のように声楽を先攻している生徒だけが動じていない。
高遠雛子が「ちょっと、聞き捨てならないわね!」と憤慨したように言った。
「少しだけ上手いって何よ!少しだけ耳が良くて指揮が出来るだけのくせに!」
雛子の言い方が可笑しかったのか、音楽科の生徒は爆笑した。
「イェーイ雛子、もっと言えー」
樹も可笑しかったのか笑った。
「高遠さん、揺葉さんのソロパート歌ってみて?聴いてみたい」
忍と四季が意表をつかれたように樹を見た。
樹が「いいよね?」と確認でもするような愛嬌のある表情でこちらを見つめた。