時は今



 忍が興味をひかれたように「うん」と答える。

「高遠さんの歌で聴いてみたい」

 四季も純粋に興味を持ったように「そうだね」と言う。高遠雛子は揺葉忍の歌をよく聴いているはずだ。それに対してどんな歌を聴かせてくれるのか──。

「僕も聴いてみたい。歌ってみて」



(忍が見ている)

 本来、揺葉忍は雛子より2歳年上である。同じ学年で同じクラスで学べるなんて思ってもいなかった人物だ。

(──四季くんも)

 綾川四季は雛子が小学校の時のコンクールで見かけて印象に残り、以来四季の出るコンクールはいつも聴きに行っているのだ。

 高遠雛子はドキドキしていた。声楽先攻ではないが歌は練習していた。揺葉忍の音楽は、雛子の中では自分の課題曲も同然だった。

「歌ってみたい」

 樹は狙ったものが来たような嬉しそうな表情になった。

「わかった。高遠さん以外のソロパートの人は少し休憩。聴いていて。後はコーラスに回る。曲は十二の月の歌。ソプラノ、アルト、テナー、バリトン、バスの順に立ち位置変わって。自分の声は自分で分かるよね?」

 樹も用意していたのか、ピアノソロを練習用に易しくアレンジした伴奏を弾き始めた。



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