時は今



「静和が今、私と四季のこと見ているのかもしれないわ」

「え?」

 四季は辺りを見回す。

「…静和さん、怒っているんじゃない?」

「ふふ。大丈夫よ」

 忍は笑った。

「そうよね?静和」

 それに答えるようにヴァイオリンが音色を奏でた。

「ね?」

「ほんとだ」

 ヴァイオリンの音が途切れる。

 カタ、と音がして、見るとふたりから少し離れたところの木の根元に、ヴァイオリンが立てかけられていた。

「静和のヴァイオリンだわ」

「何だろう?」

 忍と四季は近づいていってヴァイオリンを見る。

 ヴァイオリンの上の方に一本の鍵が結ばれていた。

「何の鍵?」

「わからないわ」

 忍がその鍵をとると、ヴァイオリンの姿形はすっと消えて見えなくなった。

「静和?」

 ヴァイオリンが再び音色を奏でた。

 一瞬の「いま」を。



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