時は今



「作ってくるから、寝てて」

「……。うん」

 由貴が行ってしまって、部屋はやけに静かになる。

 窓を流れる水滴を見て、四季は胸が苦しくなった。

 ひとりの人に、ただいてほしいというたったそれだけのことが、最も難しいもののように思えてしまうのはどうしてなんだろう。

 由貴が自分を大事にしてくれるのは、それを知っているからなのだろうか。

 人の命が永遠のものではないことを。

 こんなふうに寝ていると自分はいつ死ぬんだろうかとか、そういうことを考えてしまう。

 その不安を取り去りたくて、いてほしいと願うのだろうか。

 そんなふうに願っても、いてほしい人を、或いは、切なくさせてしまうだけかもしれないのに。

 いてほしい人には、幸せだけをあげたいのに。



(この感情はいったい何だろう)



 四季の由貴に対する感情は、言葉では説明のつかないものがあった。

 恋愛感情というのでもなく、けれども恋しい感情を超えたところにあるような。



 すっと動く灰色のものが窓から見えた。

 一匹の猫が窓の向こうから四季を見つめた。

 のら猫だろうか?

 猫は何か言いたげだったが、通り過ぎて行ってしまった。



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