時は今
真面目な、由貴らしい科白だった。
「ピアノの話をしていて楽しかった。四季以外で、あんなにピアノの話が出来た子は初めて」
「…そっか」
四季はこういう話を由貴がしてくれることが嬉しかった。
由貴がピアノを弾けなくなってしまった時はどう乗り越えるんだろうと思っていたけれど──。
「四季が俺に『ピアノ弾こう』って強く言わなかったのはどうして?」
由貴は気になっていたことを聞いてみた。
四季は自分とピアノを弾くのを楽しんでいただろう。その相手が急に弾かなくなってしまって──寂しくはなかったのだろうか?
「それは…由貴が弾かなくなってしまったのは、寂しかったよ。でも、僕、弾けなくなってしまっている理由がある人の心、無理に掻き回すような趣味ないから。ピアノを前にした時、自然に弾きたくなるくらいの気持ちになっているのでもなければ、ピアノを弾く意味はないと思うし」
「そう」
「弾こうって言ったところで、すぐに気持ちの整理がつくようなことでもなかったでしょ?」
四季は心情を察してくれていたのだ。
由貴は嬉しかった。