時は今
樹がため息をついた。
「確かに、それ以上話をしても結論が既に出ていて、これ以上は変わりようのない物事なのに、感情と感情がぶつかり合うだけの光景って、野次馬を満足させるためだけのものでしかないよね。当人たちにはもう、心を荒らすだけのものでしかないのに」
「私は、高遠さん、怖い」
ほのかが控えめな口調で話し出した。
「まともに話をして納得する人じゃないもの。愛情表現も強すぎて怖い。それが高遠さんの普通なのかもしれないけど、周りの人は傷ついて。でも、みんなで高遠さんを責めると、それもいじめみたいで嫌。だからみんな黙ってしまうの。こんな上手く行きっこないこと、考えてと言われたってわかんない。人生のスペシャリストじゃないもの」
「……」
四季がふらっと動いた。
「…高遠さんと話してくる」
繋いでいた忍との手が離れる。
「四季」
四季の表情には何の感情も浮かんではいなかった。
「四季くん」
杏とほのかも名前を呼んだが四季は静かに言った。
「高遠さんが僕を好きなのは僕のせいなの?高遠さんのことでいろいろ言われるの、もう疲れた」
雛子へ対する気持ちは完全に麻痺していた。好きとか嫌いとかいう次元のものではなく、端的にストレスを与えてくる人、という種類のものになっていた。
排除しないのは、それでも排除できないのが人であるからだ。
「ふたりきりで話した方が高遠さんも落ち着いて聞いてくれると思う」
そう言って、四季は行ってしまった。
忍の中では幼い頃に見た四季の優しい表情と、今でもそれは変わらぬだろうと思われる言葉の穏やかさとに、胸が痛くなった。
(四季──…)
*