【短】セカンド・ラブ
「なんか、綯捺って猫みたい」
「…それはつり目ってことか」
そう言うと、笑いながらゆっくり首を振った。
「いやいや、猫みたいでかわいーなーって」
「っ!…亜梨沙、観覧者乗ろう。絶対乗ろう」
「きゃー!ホントですか!?じゃあ、その後兄ちゃんに自慢しますっ」
「え。それ結構傷つくんだけど」
その言葉で皆が笑い出した。
あたしは、熱を冷ますために木の傍に避難した。
「…甘い」
告白されてから半年、どんどん奴の甘さが増している気がする。
こっちはそれを耐えるのにどんだけ苦労してるのかあいつは分かってない。
それなのに、観覧者なんか乗ったら絶対に意識飛んでしまいそう。
「いい感じに桜咲いてんなー」
そんな声がして木から少し離れて桜を見ようとしたら目の前に宮根悠些の顔を凄く近くにあった。
「ちょ、ここ学校…」
「そうえば俺、一回も先生って呼ばれてない」
何を言い出すと思ったら、意味の分からないことを言い出した。
「…呼ばれたいの」
「あー、あれから一回しか好きって言ってくれないな。俺は沢山言ってるんだけど」
確かに宮根悠些は、鬱陶しいくらい言ってくれる。
その点、あたしはあれ以来、一回も言っていないのは事実。
「…そんなの後でいいだろ」
「無理無理。だってこれで俺、綯捺の先生じゃなくなるし」
どうやら全く引く気はないらしい。
そして後ろから四人がにやにやしながらこっちを見ている。
早くしないと、他の生徒に見つかるのを恐れたあたしは意を決して言うことにした。
「 」
「…どうしよ、キスしたい」
そう言って、照れたようにあたしを抱きしめた。
“好きだよ、先生”
end