ヒーローズ
「そう。で、ココに地図が出るから……」



屋上に来てから1時間。いまだにアイフォン的なヤツの説明中。

だって機能多すぎんだよ。使いこなせる自信がない。

俺の眉間のシワに気づいた市原さんは、うーんと唸った。



「なんか、いまいちわかってもらえてないね」

「ごめん、説明はわかりやすいんだけど……」

「仕方ない!機能多いしね。実際使って覚えるのが1番よ」



そう言って市原さんは、何か検索しはじめた。



「よし、東くん初任務よ。行きましょ」

「え、え?まだ心の準備が」

「いいから。あたしの手につかまって」



ぐいっと引っ張られる。そう、フェンスの向こうに。

でも、昨日みたいに落ちるわけじゃなくて。


「俺、飛んでる?」


足元にひろがるのは見慣れた街。アパートやマンションの上を飛んでいく。



「慣れたらひとりでも飛べるようになるよ。どう?ヒーローらしいでしょ」


そう言って笑った市原さんは、いつの間にかサングラスをかけていた(雑貨屋にあるパーティーグッズ的なアレ)。

まじまじと、それを見ると「東くんもつけてるよ。風よけなの」と、また笑われた。

何これ。恥ずかしい空気なんだけど。
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