【短編】彼女の瞳に映る世界
「あ、中川君。ちゃんと見えた?…っと、中川君?」
こてんと首を傾げる町田さんの腕を無言で掴んで、僕は理科室に戻った。
「これで分かったでしょ?私が見えてる世界。春君しか見てない世界」
「黙って」
何事もなかったかのように笑って話す町田さんに、何故か僕はイライラした。
どうして彼女が笑っているのか、僕には理解できなかった。
ああいう場面に出くわすのは初めてだったけど、普通は傷つくものだ。
だけど、町田さんは笑ってる。
何で。
「何で笑ってるの?」
「え」
「竹本君のことが好きなんだろう」
「そうだよ」
「でも、さっきのは……」
「うん。春君の彼女だよ」
当たり前のように、彼女は口にした。