三日月の下、君に恋した
 何に?

 わからない。でも。


 確実にわかることがひとつだけある。

 彼は、何か隠してる。


 それが、自分が求めている重要なことと、どういう関わりがあるのか今はわからない。思い過ごしかもしれない。実はたいしたことじゃないのかもしれない。

 知りたくないことを、知ってしまうかもしれない。


 それでもいい。

 ここから動けないよりは。




 昼休みも仕事をするつもりでいたのに、友野太一に無理やり食堂に連れてこられた。

「大変なのはわかってますけど、ほどほどにしてください」

 テーブルにつくなり、生意気なことを言う。

「休憩もとらないで、毎日遅くまで残業して。俺に手伝えることがあったらやりますって何度も言ってるのに、全然仕事振ってくれないし。このままじゃ、ぶっ倒れちゃいますよ」

 航は黙って食事を続けた。太一は返事がないことに不満そうだったが、ふうとため息をつくとあきらめて自分も食べ始めた。
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