三日月の下、君に恋した



「たった今帰ったよ」

「そうですか」

「悪いが、もうこれっきりにしてくれ」

「……すみません、伯父さん」

「あいつもおまえも、なぜあの本のことを隠したがるのかわしらにはさっぱりわからんが、あの子は真剣だったよ。ひとりでこんな山奥まで来るなんて、よっぽどのことじゃないのか」

「ひとり? 彼女はひとりでそこへ行ったんですか?」

「ああそうだ。昨日の日暮れ近くにやってきて、あんまり思いつめててかわいそうだったから泊めてやった」

「……そう、ですか」

「おまえの言うとおり、まなみが死んだことだけは話した。それ以外は何も話しとらん。それでよかったんだな?」

「はい」

「よくわからんけどな、まなみが死んだことをあの子に告げるのは、わしらではなく、おまえの役目だったとわしは思うがな」

「……」

「とにかく、こんなことは終わりにしてくれ。付き合いきれん」

 不機嫌な濁声が途切れ、電話が切れた。
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