三日月の下、君に恋した
営業企画部は、梶専務をどうにか説得して(というか、やりこめて)自分たちの企画を押し通すことに成功した。
葛城リョウが手書きで原稿を書いているという意外な一面を知って、彼らは、「手書きの文字」が生み出す森というイメージで、六十周年の企業広告を作った。
その神秘的な森に佇む葛城リョウの存在感は圧倒的で、テレビCMが流れ出すと、視聴者からの問い合わせが殺到し、あっという間にマスコミと世間の話題の的になった。
さらに、CMが流れ出すのと同じくらいのタイミングで彼の新作が発表され、発売から一週間で発行部数十三万部を売り上げる記録的なベストセラーとなった。
「別に計算したわけじゃなかったんだけど」
航はそう言って、少し困ったように笑っている。
葛城リョウはもちろんだけれど、航のまわりも、最近マスコミが騒がしくなってきた。本が売れるのはうれしいけど騒がれるのは好きじゃない、と彼は少し困惑しているようだった。
「山路さんからしょっちゅうメールが送られてくるよ。すげー文句たらたらの」
菜生はおもわず笑い出しそうになった。
マスコミのせいですっかり航の素性がばれてしまい、山路均と友野太一が「何か高いもん奢ってもらわないと、やってられない」と食堂で話しているところに、美也子までが「私も私も」と便乗しようとしていたのを思い出したからだ。
ふたりで並んで縁側に座り、雨あがりの夜の庭を見ていると、あまりにも静かで時間が止まってしまったみたいに思える。
葛城リョウが手書きで原稿を書いているという意外な一面を知って、彼らは、「手書きの文字」が生み出す森というイメージで、六十周年の企業広告を作った。
その神秘的な森に佇む葛城リョウの存在感は圧倒的で、テレビCMが流れ出すと、視聴者からの問い合わせが殺到し、あっという間にマスコミと世間の話題の的になった。
さらに、CMが流れ出すのと同じくらいのタイミングで彼の新作が発表され、発売から一週間で発行部数十三万部を売り上げる記録的なベストセラーとなった。
「別に計算したわけじゃなかったんだけど」
航はそう言って、少し困ったように笑っている。
葛城リョウはもちろんだけれど、航のまわりも、最近マスコミが騒がしくなってきた。本が売れるのはうれしいけど騒がれるのは好きじゃない、と彼は少し困惑しているようだった。
「山路さんからしょっちゅうメールが送られてくるよ。すげー文句たらたらの」
菜生はおもわず笑い出しそうになった。
マスコミのせいですっかり航の素性がばれてしまい、山路均と友野太一が「何か高いもん奢ってもらわないと、やってられない」と食堂で話しているところに、美也子までが「私も私も」と便乗しようとしていたのを思い出したからだ。
ふたりで並んで縁側に座り、雨あがりの夜の庭を見ていると、あまりにも静かで時間が止まってしまったみたいに思える。