三日月の下、君に恋した
 今度会ったら、まっ先に謝ろう。

 そう思っていたけれど、自分の気持ちにはっきり気づいてしまった今、彼にどう接すればいいのか、これまで以上にわからなくなっていた。

 想いが強すぎて、顔や態度に出てしまいそうで。無関心なふりを装う自信がなくて。


「気の毒なのは早瀬さんだよ。名指しで押しつけられちゃってさ」

 太一の口から航の名前が出て、菜生はどきっとした。


 どういうことか聞こうとしたとき、食堂の入り口付近で大きなざわめきが起こった。

「あっ」と、美也子が短く叫んだ。


 菜生がざわめきの方向へ視線を向けると、長身の男性が三人、そろって食堂に入ってくるのが見えた。一人は梶専務で、もう一人は早瀬航だった。


「ほら、あれが葛城リョウだよ」

 太一が小声で言った。


 梶専務の隣に、黒いサングラスをかけた男性が立っている。言われなくてもひと目でわかるくらい、彼は目を惹く存在だった。

 カジュアルな黒のジャケットに、ジーンズとブーツというラフな格好もそうだけれど、何より目立ったのが髪だった。オレンジに近い茶髪を、長めに伸ばしている。
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